治療成績について
本邦における総出生児数に対する ART 出生児の占める割合
毎年生児に占める ART 由来の生児は増えているのが実情です。2022 年のデータをみますと、日本におけまして、770,747 名の生児が出産したなか、ART により出産した人数は、77,206 名で、10 人中 1 人が ART による出生児であったといえます。
以下、当院の2024年度の治療成績です。
毎月行っているHART合同カンファレンスでの新しい知見も活かし、卵巣機能低下症例における卵巣刺激法の工夫等による良質胚の獲得より、35 歳以下では、胚盤胞移植1回での妊娠率は 64.5%でした!また、PIEZO-ICSI の併用により、ICSI の受精率は 82.2%と高く、40 歳以上におきましても 80.5%と良好な結果でした。
今後も少しでも妊娠率を向上できるよう努力したいと思います。
■2024年度治療成績(2024 年 1 月~12 月)
治療別(IVF・ICSI)胚盤胞到達率
治療別(IVF・ICSI)胚盤胞到達率
一般に30%といわれる胚盤胞到達率。
当クリニックのデータは右表の通り、これを大きく上回っています。大切な受精卵が心地よく育つように、培養室自体の加湿などをはじめ、常に理想的な培養環境を整えております。

体外受精の治療成績は、治療を受けられる患者様の年齢や不妊原因に大きく影響され、受診される患者様の背景が異なるため他施設のデータと単純に比較することはできません。あくまで現段階での当院の治療実績という観点でご覧ください。また、体外受精に限らず生殖医療全般に言えることですが、妊娠率は年齢とともに低下し、それにかわり流産率が上昇してまいります。卵子の加齢現象と理解されていますので、充分なご理解をお願いしたいと思います。
採卵周期における過剰ホルモン環境による着床環境が不良と判断される場合や卵巣過剰刺激症候群を回避できるという長所から、近年は、新鮮胚移植を行わず、良好胚を一旦凍結保存(全胚凍結)し、融解胚移植を行うという方法が大きな流れになっています。日本では 2022 年に77,206 名の児が生殖補助医療(以下、ART)により生まれましたが、このうち 72,201 名(93.5%)が凍結胚移植によるものでした。当クリニックにおきましても、ほぼ全例で全胚凍結となっており、新鮮胚移植はごくわずかです。
融解胚移植の成績
①年齢層別凍結融解胚移植あたりの妊娠率 ※(≧3BB)
一般施設での体外受精成功率は、凍結胚を用いた場合でも、移植あたりの妊娠率は34.2%といわれています(日本産科婦人科学会2013年7月)。当クリニックでは、胚盤胞培養後、胚凍結が可能であった場合、34歳以下で64.5%、35~39 歳 51.2%、40 歳以上でも35.2%と高い妊娠率が得られております。特に難治性症例(反復不成功症例)の場合、常に自然での妊娠機序を探究し、新規培養技術を含め、最先端生殖医療技術を習得した上で、患者さん固有にカスタマイズする必要があります。どの年齢の方でも、良好胚盤胞が得られれば、ガラス化保存を行います。

②年齢層別凍結融解胚移植あたりの妊娠率(初期胚)


※融解胚移植あたりの胎嚢妊娠率(%)胚はガードナー分類の③BB以上とする
新鮮胚を用いた胚移植あたりの妊娠率
当院では、凍結融解胚移植を第一選択として採用しておりますが、良好胚を融解胚移植しても成功しない患者さまもおられるのが現実です。3 回不成功の患者さまを対象として、新鮮胚移植を行った結果、34 歳以下(平均 31.9 歳)16 周期中 6 例(37.5%)、35歳以上40歳未満(平均 36.9 歳)30周期中4例(13.3%)、40歳以上(平均 41.4 歳)22周期中2例(9.1%)で妊娠を認めました。双胎妊娠は、単一胚移植を遵守した結果、新鮮胚移植後には認めませんでした。