卵子の老化と妊娠適齢期

卵子の老化と妊娠適齢期

 

はじめに

年齢を重ねると、妊娠しにくくなることは周知と思います。ではなぜ妊娠しにくくなるのでしょう。今回は、卵子の老化と妊娠適齢期について着目してみましょう。

 

加齢に伴う卵子の老化と卵子数の減少について

妊娠の要は、卵子にあるといわれていますが、その卵子の質が年齢とともに低下することが妊娠しにくくなる原因の一つです。卵子の質の低下のことを、一般に卵子の老化と呼んでいます。同様に、加齢に伴い、卵子は数も減少することがわかっています。その減少スピードはなんと、約1ヶ月に1000個と言われています!1をご覧ください。卵巣では、生まれる前から、卵の元となる卵母細胞は体細胞分裂を繰り返し、最大で700万個まで増殖します。しかし、その後減少し、思春期ごろまでには20~30万個になります。このように排卵が起こらなくても卵巣では卵母細胞が年々減少することは、生理的な変化であると考えられています。月経が10~50歳ころまであり、40年間毎月排卵すると仮定すると、一生涯で480個前後の卵子が排卵されることになります。排卵する卵子は初経時に存在する卵子数の1%以下しかないのです。この中から、精子と出会い受精し、ひとりの赤ちゃんが生まれてくると考えるとなんとも神秘的な話ですよね。

 

卵子の老化の正体とは?~卵子の老化と染色体異常

卵の元となる卵母細胞は46本(44本の常染色体と2本の性染色体)の染色体で作られています。このまま精子と受精してしまうと、染色体の数が多くなってしまいますので、減数分裂という特別な分裂が起こり、染色体の数を半分に減らし、精子と受精することで、もとの46本の染色体を持つ細胞、受精卵(胚)になるのです。卵母細胞は出生時より、思春期に迎える排卵まで、最低でも十数年の間、減数分裂の途中でお休みをしているため、年齢が増すにつれて、休眠が長くなるため、細胞質が老化し、染色体に異常が起こりやすくなります。この卵母細胞に生じる染色体異常こそ卵子の老化の正体なのです。2をご覧ください。体外受精時に受精卵の染色体分析を行った結果です。若い方でも染色体異常は起こりますが、加齢に伴い増加することが示されています。染色体異常が起こると、受精しても胚が分割しない、分割しても着床しない、着床しても流産してしまうなどにあらわれます。そのため妊娠しにくく、流産しやすいということにつながるのです。

 

妊娠適齢期について

妊娠・出産には、人それぞれ事情があり、何歳で子どもを産むかはもちろん個人の自由です。但し、医学的にみると、加齢に伴う卵子の老化・数の減少により妊娠しづらくなること、婦人科疾患罹患率の増加や高齢妊娠による母体リスク増加の観点から、妊娠・出産の適齢は25~35歳と言えるでしょう35歳を過ぎると、卵子の老化が急激に進みますが、このことは体外受精の最近の妊娠成績をみても明らかです。3をご覧ください。加齢に伴い、体外受精後の妊娠率は低下し、逆に流産率は増加し、驚くべきことに、39歳を境に逆転し、流産率の方が高くなってしまうのです。

 

おわりに

今回は、加齢により卵子が老化することと、様々な観点から妊娠適齢期についてお話しました。妊娠や出産を望むのであれば、やはりそのチャレンジは1日でも早い方がいいのです。結婚後、挙児を希望するご夫婦の場合には、1年間妊娠が成立しない場合には不妊治療を専門とする医師への相談を検討してみてはいかがでしょうか。